市場流通アンモナイトの地層特定は可能?
イベントで来場いただいた方と地層の特定はどこまで可能かといった話をしましたので、私なりの見解を書いておきます。
マダガスカルにおける地層の特定
これは昔の時代はできたのかもしれませんが、今は殆ど商業ベースに乗っている個体に関してはどこの地層か1つ1つ言い当てたりラベル表記するのは不可能です。
その理由は、これまでに繰り返し述べてきたとおり、マダガスカルのアンモナイト販売は異常巻き等の一部例外を除いて全て重さ計り売りなのです。
1kgの注文をする際には複数の地層の個体が混ざってしまいます。
これを混ぜないでくれと要望しても現実に彼らは混ぜてしまうでしょう。
例えばですけど、100kg私が注文したとします。そうすると、80kg分採掘した時点でその地層が枯れてしまう場合もあります。その残りの20kgは別の地層からもってきて補填しているのです。
メナベ、チュレア、マジュンガとは言うもののそこにある地層は他のどの国と比べても多いことは疑いの余地なしです。
したがって、首都にあるアンタナナナリブ大学と調査研究で地層に入って研究標本として持ち帰ることでもいない限り2025年現在地層の特定は困難と私はみています。

地層を特定する意味
誤解のないように書きますと、私にとっても地層特定はできれば理想です。
ただ、ここにも研究者の価値基準と商業ベースでアンモナイトを扱う人の立ち位置の差があります。
現地人で採掘に携わる人にとっては、何kgのアンモナイトを市場に流通させて売り捌くかが優先事項なのです。
研究者の方にとっては年代やどこの地層から出たかを特定することは論文を書くうえでは重要なポイントになるはずです。
どちらが優れている劣っているの問題ではなく、求めているものが違うのです。
結論を書きます。
現地人でアンモナイト事業にかかわっている人にはよいか悪いかはさておき地層の特定は大きな意味をもっていません。


忘れもしないオウムガイ模造品混入事件
もはや私の仕入れ方法や販売方法に関しては特殊なのであまりつっこみはきません。
ですが、過去に2020年頃でしたでしょうか、一度だけ当時のtwitter上で大炎上したことがあります。
それは何かといいますと、今回の地層の話とも間接的に絡むので書いておきます。
どこの地層かを現地人が特定していないことを端的に物語る事件だからです。
私はいつものように面倒くさいから一回でまとめて仕入れてしまえと言わんばかりに200kgのオウムガイを注文しました。
そうしたら、まさに上述のように私の懇意にしている職人が在庫不足分を他の業者に頼り、注文を補填する50kgを取り寄せました。
この50kgの地層は職人は問いただしていなかったのです。
この50kg分の写真を当時化石取り扱い経験が浅かった私はtwitterに掲載しました。
今はさすがに日本に送られる前に即刻受取拒否しますが、当時はカルサイト化したオウムガイの延長線上にあるぐらいにしか無知で考えてませんでした。
その後、これまで私の販売方法に不満があった同業者や研究者から総攻撃を受けました。
今はさすがに妄信しませんが、当時の私は現地人の職人の意見は絶対正しいとの思い込みがありました。
そして、炎上した後で常連さんにお願いしてそのオウムガイ模造品を裁断してもらいスライス個体にしてもらったのです。
その結果は真っ黒で完全なるカルサイトでオウムガイの痕跡はかけらもありませんでした。
職人にその写真を提示して、代替品が翌年発送されてきました。
もう何が言いたいかおわかりになったはずです。
地層を特定できるならした方がよいのです。そうすれば模造品が紛れ込むようなリスクは最小限に軽減できます。
しかしながら、現地人は注文受けた重さのアンモナイトを手配するために色々な動きをします。
その過程でこのような事件が発生することもあります。
これくらい現地人のアンモナイト事業に関わる職人と日本人の学術的にアンモナイトを深掘りする方の間にはスタンスの違いが存在します。
地層の特定を妨げる別の要因
地層の特定が遅々として進まない別の要因についてもふれます。
マダガスカルの地層情報が表に出てこない理由はたくさんありますが、代表的なものは外国人の地層アクセス禁止です。
「じゃあお前はなんで2023年に地層見学行ってるんだよ?」と声が聞こえてきそうですね。
これは笑い話になりますが、現地人が鉱山省のルールを知らなかっただけです。
注文を500kg以上すること、地層見学のための交通費や宿泊費を全て私が負担することで同行させてくれました。
今考えるとルールを知らなかったとはいえ、ルール違反には変わりないので盗賊に襲われて命落としても何にも文句は言えません。
マダガスカルのアンモナイト地層の周りの村では盗賊による襲撃が多発しており、私のような訪問方法は絶対に真似しない方がよいです。

地層を見学に行ける正規ルートは、現地の大学等を通じてセキュリティエスコートをつけて実現することが現実的でしょう。
以上、マダガスカルアンモナイトの地層が他の国のように特定して明記されない点について私なりの見解をまとめてみました。
