なぜアンモナイトの卸売は難しいのか?
最近国内外複数の方から卸売を打診されましたが実現はまずしそうにありません。
その理由を私なりに考察してみます。
そもそも私は卸売業者なのか?
何をもって卸売業者と呼ぶかで定義は変わるのでしょう。
まとめ売りの頻度や仕入れ規模で判定するならば、私は卸売業者とも言えます。

ただし、実際にはヤフーオークションやメルカリ等で小売をしており、業者への直接的な大量卸はやっていませんので私の解釈ではやはり小売業者と考えています。
そもそも卸売の形式をとっているのは総合天然石屋くらいしかいないのではないでしょうか。
なぜ卸売を私が引き受けることができないのか?
これは再三にわたり述べていますが、仮に卸売の提案があったとしても私がヤフーオークションで出品している価格が1円開始であり最安値でありそれ以上に値下げはできないからです。
私がヤフーオークションで売上げている数字を中長期的に継続して上回ることがハードルとなるはずです。
これは無在庫転売せどり屋が成立しないことにも共通する部分です。一時的に転売が成立してもそこに絶対的な付加価値と再現性を共存させなければ事業継続性はありません。

マダガスカル産のアンモナイトを市場に供給している量は私は日本国内でおそらく群を抜いているでしょう。その私から仕入れる業者は、将来的に大元の仕入れ業者と同一線上で競争することになります。
インターネット社会ですから、SNS等で最終顧客の方もマダガスカル産アンモナイトの仕入れ元がどこかを突き止めることはさほど難しくないでしょう。大学関係の研究者は、私の仕入れ量を既に把握されているでしょうし、常連さんの巡検部隊との情報共有もなされているはずなのです。
私が卸売を引き受けてもヤフーオークションの落札額よりも販売価格下げることは不可能であること、私自身が小売業者の体をとっている以上卸売りをしても利益が減るだけでメリットがないことがわかります。
この2点が卸売を引き受けようがないことは理解していただけるはずです。
ただし、例外はあり教材として教え子の方に提供する教師の方や通院児童にプレゼントする医師の方にはまとまった個数を安く提供した経験はあります。
一方で、事業利益を見込む卸売についてはやはり再現性も引き受ける側の採算性メリットも見込みづらいのが率直な感想です。
現地事情と日本の市場の乖離
繰り返し述べているとおり、現地の仕入れ価格は重量量り売りです。
この量り売りは、単純に好きな個体や優良個体、欲しいサイズを希望どおりに買付できるほど甘い世界ではないのです。
気に入った個体が仮に1個800gで存在するとしましょう。最低購入単位は1kgからと仮定するなら、残り200gは自分の希望にそぐわない個体がくる可能性は高いのです。
実は、小売業者として私が継続している大きな理由がここにあります。
優良個体800gの個体を高い値段でさらに先に待つお客様に販売することはさほど難しくありません。
しかし、残りの訳あり200gの個体を大切にしてくれる方に販売するのには相当な販売網や信用実績が必要となります。
要するに800kg仕入れて、80kgの優良個体である主役と720kgの訳あり個体である脇役がアンモナイトにも存在します。
その両方ともに引き取り手を見つけてあげることがアンモナイト専門販売業者としての役割です。
80kgの優良個体しか必要ない方はそこだけを見て卸売価格を提示されるかもしれませんが、大口輸入業者は全体の800kgで残りの720kgも含めて総合判断をします。
さらに、私は掘削作業に入る前に建機や作業員を現地で手配する費用を前金として負担しています。これを商品代金のうちの半額を事前に支払うことで大規模な仕入れを行う外堀を埋めています。
仮に、現地人が発掘に向かったものの、全く掘り当てることができずに不調に終わった場合、この持ち出し費用は全て消えてなくなります。
さらに私と現地人の間には一切の契約書は存在していません。つまり、相互信頼関係のみで成立している取引です。
この費用やリスクを卸売で取引する業者に転嫁することは、利益がほとんど持っていかれるでしょうからまず不可能なのです。

卸売に私が向かない決定的な理由
私のアンモナイト販売の目的は利益をあげることではありません。
日本にはまだ存在しないマダガスカル産アンモナイトに特化した博物館を建てることです。
そのために何トンもの仕入れを行っているのです。たとえお金を積まれても、現地の職人さんからの博物館展示用贈呈個体を販売に回すことは心情部分もあるのでしません。
ここまで説明すればおわかりいただけると思いますが、目先利益を優先して早く在庫を売り急ぐ理由が私にはどこにもないのです。
しかもマダガスカルの物価は日本どころではない速度で上昇しています。
先日記事にしたように時事情勢もマダガスカル産アンモナイトの市場価格を高騰させる方に傾いても、安い方向に将来的に推移する可能性は低いのです。
仕入れ自体は楽しんで行っていますが、事業継続の観点ではかなり骨が折れるため頻度は最小限に抑えたいのです。
以上の点からこれまでも今後も私が卸売に参画する可能性は限りなくゼロに近いでしょう。